最近「風に立つライオン」で絶好調に登りつめた、さだまさし原作の映画シリーズで、過去にもいい作品があるとの噂を聞き、今さらながらにDVDで観てみました。もちろん原作は読んでいませんし、出演者もどんな方がいらっしゃるのか知らずに挑んでみた次第です。
最初に鍋島淳裕 撮影監督の撮影がとてもいい!暗いシーンでも、明るいシーンでも、演出上、何をボカして何にフォーカスすべきか、よく心得てらっしゃる。またそのぼかし具合もキレイでいいです。それに主観ショットでも、登場人物のギクシャクした気持ちが、アングルやズームの切り換りに表現されていて、なんて上手なんだろうと思ってしまいました。欲を言わせて頂くなら、証明がもう少し上手だともっときれいになるんですけどね。日本には、いい照明さんていませんもんね。
主な出演者の方々の演技も良かったですね。原田泰造、松坂桃李、染谷将太といった脇役が上手なのは薄々分かっていましたが、友情出演の檀れい、柄本明が遺族役でうまい演技を披露してくれていました。予期していなかったので、予想外の嬉しさでした。Goodです!
けれども、これらのような素晴らしいクライマックスを沢山持ちすぎてしまうと、作品に強弱がなくなってしまうことをこの作品は証明してしまいましたね。おそらく原作ではなく、シナリオが不味かったんだと思います。常に深長な言い回しのセリフが続き、次から次とやってくるクライマックスクラスの見せ場は、ひとつひとつが良くても、助走とアクセントが強弱としてハッキリつかないと、どこで観客の琴線をフックしてくればいいかが曖昧になってしまうものです。そういう意味で、この作品のシナリオは映像になった時のイメージがイマイチ確立できないまま書かれていたのではないかなと思います。
それでも、とにかく光っていたのはダブル主演の岡田将生くんと榮倉奈々ちゃんですよね。特に榮倉奈々ちゃんが居酒屋で彼の写真を取るシーンは、観る男性の心をグイッと引き寄せますね。いつもニコニコしている笑顔の表情が魅力的な女優さんは、キャスティング側や演出側としては可哀そうな悲劇のヒロイン的役回りをさせたくなるものです。そんな中でも、この作品での榮倉奈々ちゃんの辛い人生の中で湧き出すような泣きの演技は最高クラスのレベルにありました。一方でストーリーが進み、彼女が笑うシーンがやってくると、それはそれは観ている人々に幸せの感覚を与えてくれます。手放しで褒めることができる、いい女優さんですね。
監督 瀬々敬久
脚本 田中幸子、瀬々敬久
原作 さだまさし
出演者 岡田将生、榮倉奈々、原田泰造、松坂桃李、染谷将太、津田寛治、鶴見辰吾、吹越満、洞口依子、堀部圭亮、柄本明、檀れい、宮崎美子、渡辺真起子、斎藤洋介
音楽 村松崇継 主題歌 GReeeeN
撮影 鍋島淳裕
編集 菊池純一
製作会社 「アントキノイノチ」製作委員会
配給 松竹
公開 2011年8月18日カナダ(モントリオール世界映画祭)、2011年11月19日(日本)
上映時間 131分